"時給951円と捨てられた妻の正体" 第14話
私の隣には、子に座りながらも誇らしげに目を細める修造と、着物姿で優しく微笑む静の姿があった。 そして――私の隣につ、で誠実そうな代の男性。 『会社を共同設した、ビジネスパートナーであり婚約者の藤氏』とテロップが表示されていた。
「あ……あ……」 透の喉から、掠れた嗚咽が漏れた。
あの所にっていたはずなのは、自分だったのだ。 妻のに謝し、誠実に寄り添っていれば、自分は今頃、あの巨な富と名声と温かい族の真んで、誰もが羨むを歩んでいたはずだったのだ。
それを――自らの浅ましい虚栄と、っぽいの肉欲のために、すべてドブに投げ捨てた。
ビジョンを見げる透のボロボロの作業着のポケットには、今の当の残りの、数百円の銭しか入っていなかった。
「おい、邪魔だぞホームレス! どけ!」
通りかかった若者の集団に肩を突かれ、透は点字ブロックのに倒れ込んだ。 擦りむいたの平から血が滲む。 誰もち止まらない。誰も見向きもしない。 き交う々は、汚れた残飯のような男を瞥すると、汚物でも避けるように距を取って通り過ぎていく。
「俺は……俺は収千万だったんだ……」 透はアスファルトに額を押し当て、虚空に向かって呟いた。
「俺は……企業の課だったんだよ……! あいつは俺の嫁だったんだ……! 俺を養うはずだったんだよぉぉっ!!」
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通りすがりの女子が、気悪そうにりで逃げていく。 警察官の自転がづいてくる気配配に、透は慌ててちがり、を引きずりながらの暗へと逃げ込んだ。
の暗い壁際。 段ボールを敷いて座り込む浮浪者たちの列に混ざり、透は膝を抱えた。
の奥で、のあの夜、自分が妻に向けて放った最の言葉が、呪いのように無限にリフレインしていた。
『平気ぶるな。俺に捨てられたらおはきていけない』 『婚して困るのはどっちなのかしらね』
困ったのは、破滅したのは、ぬことすら許されずにき恥を晒し続けることになったのは――ならぬ、自分自だった。
透はたい両で顔を覆い、暗ので声を殺して泣きじゃくった。 だが、その涙を拭ってくれる者は、この世界のどこにもしなかった。
同じ頃。 港区の閑静な台にあるフレンチレストランのテラス席で、私は穏やかな初のに吹かれながら、ワイングラスを傾けていた。
向かいの席に座るのは、藤正(歳)。 建設コンサルタント会社から独し、現は私の会社と共に公共インフラの再事業を掛ける、極めて実直で誠実な共同経営者であり、私のしいパートナーだった。
「葉さん、来週のお父様の施設見学の件ですが」
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藤は帳をき、穏やかな笑顔で言った。
「葉のが見えるケアハウス、担当のケアマネージャーさんと事打ちわせを済ませておきました。理学療法士の配置もく、お母様も緒に宿泊できるスイート棟が空いているそうです」
「藤さん、いつも私の族のことまで気を配ってくださって……本当にありがとう」 私がから礼を言うと、藤は照れたようにを掻いた。
「何を仰いますか。僕の両親はくにくなっていますから……修造お父様と静お母様は、僕にとっても本当の親のようなです。葉さんが切にしているたちを、僕も全力で切にしたい。それだけですよ」
藤のが、テーブルので私のに優しくねられた。 そのの平には、透のようなたい打算や支配欲など、微もしなかった。 互いの仕事を敬い、互いのを支えう、本物のの信頼関係。
「葉さん。……来の創記パーティーで、お父様とお母様ので、正式に婚約を発表させていただいてもよろしいですか?」
「……はい」 私は迷うことなく、力く頷いた。
「んで。藤さんと緒なら、どんな未来も恐れずに歩んでいけます」
テラス席から見げる京の夜空には、澄み渡る々のが瞬いていた。 苦しみ抜いた過のすべての傷跡が、この温かなの温もりによって、優しく癒やされていくのをじていた。
あれから、さらにが流れた。