"時給951円と捨てられた妻の正体" 第13話
「園田修様、ならびに静様からの言伝をお預かりしております。『度と連絡をしてくるな。もすべて受取拒否で送り返す』とのことです」
「嘘だ……! 俺は息子だぞ!?」
「いいえ、違いますよ」 弁護士は淡々と告げた。
「先、園田修様と神崎葉様ので、正式な普通養子縁組が成いたしました。神崎専務は現、法に園田の女となっておられます。そして、修様が公正証遺言を作成され、園田の全財産、、建物を含む切の相続権は、女である葉様へ単独で遺贈されることが確定しました」
「な……んだと……?」 透のので、ガラガラと何かが完全に崩壊した。
「つまり、あなたには将来の実の相続権すら、円もしません。遺留分の減殺請求も、過のな非と横領を理由とする『相続廃除』の続きが庭裁判所でですので、すべて却されます」
弁護士はちがり、コートのボタンを留めた。
「あなたに残されたのは、刑期を終えた、葉専務に対してかけて返済し続けなければならない、千百万円の損害賠償債務だけです。……以、ご報告まで」
「待て! 待ってくれよ!!」 アクリル板をバンバンと叩く透の叫びを、守が無に制圧した。
「やめろ、に戻れ!」
たい鉄の扉が閉ざされ、透は暗のへと崩れ落ちた。 かつて自分が蹴にし、ゴミ袋と共に追いした妻が、自分の実の娘となり、自分の相続するはずだった豪邸と資産のすべてを受け継ぎ、自分は刑務所のたいので、消えない借を背負わされる。
広告
「ああああああっ!! 俺のだぞ! 俺のだったんだぞおおおっ!!」
血を吐くような絶叫は、分いコンクリートの壁に吸い込まれ、誰のにも届くことはなかった。
それから、半の歳が流れた。
初のい差しが照りつける、刑務所のい鉄扉の。 満期所を迎えた透は、汚れたのボストンバッグつを抱え、アスファルトのにっていた。
懲役、執猶予なしの実刑。 刑務所のでの過酷な刑務作業と、粗末な事によって、かつてキロくあった体はキロ台まで落ち込み、頬は骨のように尖っていた。 髪の半分以は髪に変わり、腰を痛めて歩にはを引きずるようになっていた。
元にあるのは、刑務作業で得たわずか数万円の報奨だけ。 科者となった代半ばの男を雇ってくれる会社など、どこにもなかった。
透が辿り着いたのは、のドヤにある、泊千百円の簡易宿泊所だった。 カビのえた万に体を横たえ、毎朝に起きては、雇いの解体現や事の現へ配師のワゴンに乗って向かう々。
当万円。 しかし、その当のから、容赦なく差し押さえの通が届く。 法律事務所が裁判所を通じて張り巡らせた債権回収の網は、透が雇いの登録をした派遣会社へも正確に届いていた。
広告
元に残るのは、そののパンとカップ麺を買うための、わずかな銭だけ。
ある曜の夕暮れ。 事現からの帰り、透は喉の渇きを癒すために、駅の広のベンチに腰をろした。 元には、で汲んできたペットボトルのぬるい。
ふと顔をげると、駅の型商業ビルの壁面に設置された、巨なビジョンが目に入った。
ファンファーレの音楽と共に、経済ニュースの特集番組が映しされていた。
『――続いての特集です。環境インフラ業界のトップランナーとして急成を遂げる、神崎グローバルサービス。本は、同社の代表取締役副社に就任された、神崎葉氏にお話を伺います』
画面いっぱいに映しされたのは、仕ての良いネイビーのスーツを着こなし、な鏡の奥から自信に満ちた笑みを浮かべる――私の姿だった。
美しくえられた髪、澄んだ肌、堂々たるち居振るい。 アナウンサーからの質問に対し、淀みない声で全国の雇用創と環境ビジネスの未来を語るその姿は、眩いばかりのを放っているように見えた。
「か……葉……」 透のから、ペットボトルが転がり落ちた。
ビジョンの画面が切り替わり、副社就任パーティーの映像が流れる。