"時給951円と捨てられた妻の正体" 第2話
修造は鏡の奥の目を鋭く細め、画面をスクロールするたびに、骨ばった拳をギリギリと震わせた。
「……何ということだ。あいつは、自分が誰のおかげで今まで飯をえていたのか、ここまで分かっていなかったのか……!」
「お父様、お母様。私の至らなさのせいで、このような結果になってしまい、本当に申し訳ありません」 私が畳に両をついてくをげると、静が慌てて私のを取り、抱き起こしてくれた。
「何を言っているの葉さん! あなたが謝ることなんてつもありません! 悪いのは全部、あの勝で恩らずな透よ!」
静の目から粒の涙がこぼれ落ち、私のの甲を濡らした。
「結婚してからの、あの子が世したと狗になってあなたを雑用係と罵るようになってからも、あなたは度もあの子を悪く言わなかった……。それどころか、私たちの病院の送り迎えや、暮らしの私たちを気遣って、毎万円もの仕送りを欠かさず続けてくれて……!」
「お母様、それは私が好きでやっていたことです。おは、私にとって本当の両親と同じですから」
私の言葉に、修造はく息を吐き、静かに首を横に振った。
「葉さん。あいつは、おの本当の職業をらんのだな?」
「はい。、の紹介で会った頃、『清掃関係の会社に勤めています』とお伝えしたのですが……透さんはそれを、制の現清掃員だと勝にい込んでいたようです。
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訂正するタイミングを逃したまま、ここまできてしまいました」
「ふん、百円だと笑ったそうだな」 修造の元に、徹なりの笑みが浮かんだ。
「あの百円は、、おが庭の剪定と掃除を伝ってくれた、私たちが『タダでこき使うわけにはいかん』と無理やり渡した、沖縄の最賃の端数遣いではないか。あのバカは、それを妻のだと本気で信じ込んでいたのか」
「はい。そのようです」
「救いようのない馬鹿者だ」 修造は机のの婚届を引き寄せ、力く私の目を見据えた。
「葉さん。の朝番で、この届を区役所に提しなさい。あんな男に、これ以あなたの尊いを吸い取らせる筋いは微もない。……そして、これからのことは、すべて私と社の黒田君に任せてもらいたい」
修造のからた「黒田」という名に、私はハッと息を呑んだ。 黒田裕介。透が勤める証・総エンジニアリング企業『アークシステムズ』の代表取締役社である。
「お父様、黒田社にご連絡を……?」
「当然だ。あの会社は元々、私の創業した会社を葉さんの親御さんのグループに救済買収してもらった経緯がある。……そして今、アークシステムズの株主として経営を実質に支えているのが誰なのか、あの愚息にいらせてやらねばならん」
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修造の瞳に宿ったのは、かつて代で会社を興した剛腕経営者の、容赦のないだった。
翌朝、午分。 庁したばかりの区役所の民課窓に、私はっていた。
受領印が押され、戸籍謄本の続きがむ。 ほんの分まで、私を法に縛り付けていた「園田」という名字が、類ので静かに切りされていく。 窓の担当者から「続きが完いたしました」と控えを渡された瞬、私はく息を吸い込んだ。
胸を締め付けていた鉛のような圧が、嘘のように散していた。 過、どれほどたく突き放されても、「族だから」「いつか昔の優しさを取り戻してくれるから」と自分に言い聞かせてきたの糸が、完全に断ち切られたのだ。
区役所をて駅のホームへ向かう階段をりていると、バッグので社用のスマートフォンがく震えた。 画面に表示されたのは、『アークシステムズ 黒田裕介社』の文字だった。
「もしもし、黒田社。朝くから恐れ入ります」
『園田取締役! あ、いや、今からは旧姓の神崎(かんざき)様とお呼びすべきでしょうか!』 受話器の向こうから聞こえてきたのは、普段のな社の声とはまるで異なる、弾むような、今にも万歳唱しそうなトーンだった。
『先ほど、会の修造様からすべて伺いました! 本当ですか!? あの透君と、正式に婚が成したというのは!』