"時給951円と捨てられた妻の正体" 第1話
「おい、百円の役たず。収千万円の俺に寄する活は、今で終わりだ」
残業を終えて夜のに自宅マンションへ帰宅した私――園田葉(そのだ・かずは、歳)を待ち受けていたのは、玄関の廊に無残に積みげられた黒いゴミ袋のだった。
袋の隙から、私が切にしていた仕事用のジャケットや、母から譲り受けた本革のバッグがはみしている。で踏みつけられたように破れ、に散乱していた。 呆然とする私のに、玄関のドアが乱暴にけ放たれ、から夫の透(とおる・歳)が姿を現した。
片には缶ビール。もう片方のには、すでに緑の公類――記名押印済みの婚届が握られていた。
「透さん……これ、どういうこと?」 「見りゃ分かるだろ。ここは収千万円の俺が契約している級マンションだ。おみたいな底辺の清掃員ババアを置いておく義理はない。荷物は全部まとめておいてやったから、それ持って今すぐ消えろ」
透は勝ち誇った品な笑いを浮かべ、婚届を私の胸元へと叩きつけるように押し当ててきた。
「昨、俺のスマホを勝に見ただろ? 彩(あや)とのラブラブな写真を見てショックしなかっただけ褒めてやるよ。代のピチピチした美女に比べたら、おなんてもう女としての価値はゼロなんだよ。
広告
養ってやってる恩も忘れやがって」
昨、透が玄関に置き忘れたスマートフォンに届いた、・彩からの々しいメッセージとベッド写真。問い詰めた私に対し、透は逆ギレしてをびしていったはずだった。 そして今、私が仕事で留守にしている隙を狙い、業者のように私の私物をゴミ袋に詰め込み、鍵をけて待ち構えていたのだ。
「俺に捨てられたら、百円のおがきていけるわけないよな? 泣いて座して縋り付いてくるなら、ベランダの物置部くらいには置いてやってもいいぞ?」
透は顎をしゃくり、屈辱にまみれた私の涙を今か今かと待ちわびていた。
しかし――。 私のから漏れたのは、嗚咽ではなく、喉の奥から込みげる乾いた笑い声だった。
「ふ……ふふっ、あはははは!」
「……あ? 何がおかしいんだよ。ショックでが狂ったか?」 審そうに眉根を寄せる透の先に、私は渡された婚届をピラピラと掲げて見せた。
「ありがとう、透さん。本当に助かるわ。じゃあ、今すぐていくね。そこのゴミ袋に入った荷物も、面倒だからそっちで適当に産業廃棄物として処分しておいてちょうだい」
「は……? へ、平気ぶるなよ! 俺がいなきゃ、おはの飯代にも困るんだぞ!?」
苛ちを募らせる元夫を背に、私は迷うことなく踵を返した。
広告
元には、自分のスマートフォンと財布の入った通勤用のハンドバッグだけ。
「がりはその辺にして、さっさと野垂れね! これからは彩とこので贅沢昧だ!」
背に浴びせられる罵声を、私はよいのように聞き流した。 エレベーターに乗り込み、エントランスをてタクシーを拾う。
「運転さん、港区のまでお願いします」
私はシートにく背を預け、元のスマートフォンを操作した。 透はらないのだ。 私が週に度、義実へ通って掃除をしていた際に義父から渡されていた「百円」の本当のを。 そして――彼が勤める会社の株のパーセントを、体誰が握っているのかを。
画面に表示された義母の連絡先をタップした瞬、私の指先は微かに武者震いしていた。
夜の過ぎ。タクシーがしたのは、閑静な級宅に佇む、入れのき届いた純の構えのだった。 透の実――園田本である。
インターホンを押すと、すぐに扉の鍵がき、玄関から割烹着姿の義母・静(しずえ・歳)が転がるように駆けてきた。
「葉さん! 話で聞いたけれど、本当なの!? あのバカ息子が……!」 「お母さん……夜分遅くに申し訳ありません」
居へ通されると、奥から杖をついた義父・修造(しゅうぞう・歳)が険しい表で迎えてくれた。
テーブルのには、先ほど私が持参した、透の署名捺印済みの婚届。そして、私のスマートフォンに保された、透と・彩の密着写真の数々が置かれていた。