みかん小説
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"帰ってきた長男に家はなかった" 第10話

引き揚げの途では病気になった。

千鶴に助けられた。

自分も彼女を助けた。

族の否が分からないで、帰る所を失った女性へ「自分が守る」とにした。

それもまた、慎太郎がそのをき抜くために必だった約束だった。

だが本へ帰ると、澄はきていた。

正もきていた。

も残っていた。

父も弟もいた。

すべて残っているように見えた。

それなのに、何つ以と同じではなかった。

慎太郎は、正に度だけこう話したことがある。

「駅からまで歩いてるな、俺は何を言おうかずっと考えてた」

「何を?」

「親父にはただいま。隆次にはありがとう。澄には待たせてすまなかった。おにはきくなったなって」

正は黙って聞いていた。

「全部言えば、またと同じように暮らせるとってた」

慎太郎は笑った。

「馬鹿だったな」

「仕方ないよ」

正が言うと、父は首を横に振った。

「仕方ないで済ませたら、隆次の3も澄の3も消えてしまう」

それから慎太郎はしを置いた。

「帰るっていうのは、いた所へ戻ることじゃないんだな」

正はその言葉をく覚えていた。

戦、復員してきた男たちは、ただ列をりて自宅へ戻ったのではなかった。

自分がいないにも々がき続けた世界へ戻ってきた。

妻は夫を待ちながらを取った。

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子どもは父のいない暮らしので成した。

弟は兄の代わりを務めるうちに、自分自の庭を築いた。

親は息子の還を願いながらも、目のの族をべさせるために決断しなければならなかった。

帰るを失った者もいた。

誰かに助けられなければ本へたどり着けなかった者もいた。

そので、誰か1だけを悪者にすることはできなかった。

隆次が兄のを奪おうとしたわけではない。

源蔵が男を見捨てたわけでもない。

慎太郎が最初から妻を裏切ろうとしたわけでもない。

澄も、千鶴を憎むことだけを選ばなかった。

それぞれが、そのにき残るための選択をしていた。

ただ、その選択同士が戦争の終わったにぶつかった。

慎太郎は結局、実の呉へ戻らなかった。

隣町の織物問で働き続け、澄と正とさなで暮らした。

慎太郎と澄の関係も、征と全く同じにはならなかった。

けれど2は、同じ形へ戻ることではなく、しい夫婦として暮らし直すことを選んだ。

千鶴は阪で働き、自分の活を始めた。

隆次は呉を守り続けた。

盆と正には2つの族が同じ座敷へ集まり、子どもたちはたちがかつて何を争ったのかもらずに笑った。

正がになってからも、の板は残っていた。

その主は隆次だった。

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父・慎太郎の名が板に掲げられることは度もなかった。

戦争へくなら、考えられないだった。

それでも慎太郎は、晩までを取り返そうとはしなかった。

ある正、親族が集まった席で、隆次が兄へ酒を注いだ。

「兄さん」

「何だ」

「もしあの、俺がを返してたらどうなってたとう?」

慎太郎はし考えてから笑った。

「おが俺をんでたんじゃないか」

隆次も笑った。

「かもしれん」

「俺もをうまくやれたか分からん」

「兄さんならやれたよ」

「どうかな」

2はそれ以話さなかった。

どちらのが正しかったのか、答えをす必はなかった。

慎太郎が征しなければ、隆次はを継がなかった。

慎太郎がもっとく帰っていれば、また違った未来があったかもしれない。

だが実際に起きたは1つだけだった。

それをやり直すことはできない。

昭21。

復員列からりた父に、祖父は言った。

「おは、このには入れん」

10歳だった正には、それがただ残酷な言葉にしか聞こえなかった。

父は3も戦で耐え、きて帰ってきたのに、なぜへ入れてもらえないのか。

祖父が悪い。

叔父が父の所を取った。

そうった。

しかし何も経って振り返ると、正は別のものが見えるようになった。

あの、祖父が守ろうとしたのはだけではなかった。

3このを背負った次男のも守ろうとしていた。

そしてへ入れなかったことで、慎太郎はまれて初めて「男だから」

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