みかん小説
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"帰ってきた長男に家はなかった" 第9話

戦のように古着や交換品ばかりを扱う必はなくなり、しい反物も入るようになった。

慎太郎は々、仕事の都でへち寄った。

「これ、うちの問で扱えるぞ」

商品を見せることもあった。

隆次も商売の顔で答えた。

「値段は?」

「これくらい」

「いな」

「今ならどこも同じだ」

そんなやり取りをする2を見ていると、かつてを巡って鳴りった兄弟には見えなかった。

ある、正が父に聞いた。

「を継ぎたかった?」

慎太郎はすぐには答えなかった。

正はもう子どもではない。

当の事も理解していた。

「昔はな」

慎太郎は答えた。

「帰ってきた直は、を取り返すことしか考えてなかった」

「隆次叔父ちゃんをんでた?」

「しは」

「爺ちゃんも?」

「かなりな」

正は笑った。

慎太郎も笑った。

「でも今は違う」

「どうして」

慎太郎はの方角を見た。

「俺がいない3を、なかったことにはできないからだ」

正は黙って聞いた。

「俺は戦で3きた。隆次はここで3きた。澄も、おも、親父も同じだ」

慎太郎はゆっくり続けた。

「俺が帰ったからって、みんなの3を元に戻せって言うのは無理だったんだ」

正は駅で父を迎えたのことをいした。

10歳の自分は、本気で「これで族が元に戻る」とっていた。

父がいない3は、ただ待っているなのだとっていた。

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けれど違った。

そのにもはきていた。

隆次はを守った。

結婚した。

子どもがまれた。

澄は夫が戻らないに耐えながら正を育てた。

源蔵は老い、病気になり、を続させるために決断した。

千鶴は族を失い、きる所を探していた。

慎太郎自も、帰還の途で3と同じ男ではなくなっていた。

誰も止まってはいなかった。

「じゃあ、父ちゃんは跡取りじゃなくなってよかったの?」

正が聞く。

慎太郎はし考えた。

「よかったかどうかは分からん」

正直な答えだった。

「でも、これが俺のになった」

その言葉には悔だけではない響きがあった。

数、隆次ので祝い事があった。

を改装することになったのだ。

古くなった板も掛け替えることになった。

職が古い板をす、慎太郎も呼ばれた。

「兄さん」

隆次が言った。

「これ、どうする」

先に掲げられていた板だった。

父の源蔵の代から使われてきたものだ。

慎太郎はの表面をで撫でた。

幼い頃、この板のをくぐって学へ通った。

跡取りとして育てられ、いつか自分のになるとっていた。

「残しとけ」

慎太郎は言った。

「捨てるのはもったいない」

隆次は頷いた。

その、古い板はの奥へ切にしまわれた。

慎太郎は度もそのの主にはならなかった。

けれど、それによって族でなくなったわけではなかった。

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隆次も兄を「を捨てた」とは言わなかった。

慎太郎も弟を「自分のを奪った」とはわなくなった。

2のにあったのは、どちらが正しいかという答えではなかった。

ただ、それぞれが戦争のに背負ったを、ようやく互いに認められるようになったということだった。

が流れても、正は昭21のの景を忘れなかった。

復員列が駅へ入ってきたの黒い煙。

々の叫び声。

母の震える。

そして列からりた、痩せた父の姿。

あの、父は確かに故郷へ帰ってきた。

けれどになった正は、父が「帰ってきた」という言葉のを、子どもの頃とは違って考えるようになった。

父が征する、本には決まった形があった。

祖父の源蔵が主。

男の慎太郎が跡取り。

その妻が澄。

その息子が正。

次男の隆次は、いずれへる。

誰もそれを疑わなかった。

ところが戦争は、その順番を突然断ち切った。

慎太郎がいなくなった。

を守る者が必になった。

隆次がそこへ入った。

仮の役目だったはずが、1、2、3と続いた。

そのに、仮だったが本当のへ変わった。

妻ができた。

子どもがまれた。

客との信頼もまれた。

も、隆次自のものになっていった。

方の慎太郎も、戦でただ待っていたわけではなかった。

命の危険にさらされ、仲を失い、本へ帰れるかどうかも分からない々を送った。

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