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"帰ってきた長男に家はなかった" 第7話

正だけは々、祖父のへ遊びにった。

帰ってくると、従弟と遊んだ話をした。

「隆次叔父ちゃんが菓子くれた」

慎太郎は「そうか」と答えるだけだった。

本当はの様子が気になった。

商売はうまくいっているのか。

父の体調はどうなのか。

だが、自分からを向けることはできなかった。

征、は自分のそのものだった。

今では、そのへくことが弟のへ踏み込むようにじられた。

ある、問の仕事で実のくを通った。

先では隆次が客と話していた。

軒先にはしい商品がし並んでいた。

以よりるく見えた。

慎太郎はを止めなかった。

ただ、通り過ぎながらさく息を吐いた。

「守ったんだな」

誰にも聞こえない声だった。

そのの、源蔵の体調が悪化したというらせが届いた。

それでも慎太郎は、すぐには戻らなかった。

父に「このには入れん」と言われたの声が、まだ胸に残っていたからだった。

慎太郎が父と再びまともに顔をわせたのは、帰還から2く経った頃だった。

源蔵の病状が急に悪くなった。

らせを持ってきたのは正だった。

学から帰る途にへ寄り、祖父が寝込んでいると聞いたのだ。

「父ちゃん、爺ちゃんが起きられないって」

慎太郎は黙った。

澄が夫を見た。

「ってきたらどうですか」

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「……」

「会わないまま何かあったら、悔しますよ」

慎太郎はようやくちがった。

2ぶりにの引き戸をけた。

懐かしい匂いがした。

畳。

古い。

反物。

幼い頃から何度も嗅いできた匂いだった。

隆次が奥からてきた。

兄弟はしばらく見つめった。

「親父は」

「奥」

それだけだった。

源蔵は布団に横たわっていた。

以よりさらに痩せ、声も細くなっていた。

慎太郎が枕元へ座る。

「親父」

源蔵がく目をけた。

「来たか」

「うん」

い沈黙があった。

慎太郎には言いたいことがたくさんあった。

なぜあの、へ入れなかったのか。

なぜ自分を待ってくれなかったのか。

けれど病の父をにすると、どれもにできなかった。

源蔵の方が先に言った。

「は隆次に任せる」

慎太郎は頷いた。

「分かってる」

「ってるか」

慎太郎はし考えた。

「はな」

「今は」

「分からん」

源蔵はく笑った。

「おらしい」

慎太郎もし笑った。

「親父も勝だった」

「そうかもしれん」

「俺が帰るって信じてなかったのか」

源蔵はゆっくり首を横に振った。

「信じたかった」

「なら」

「信じることと、を止めておくことは別だった」

その言葉は、あのと同じだった。

だが慎太郎は、もう鳴らなかった。

2、自分で族を養ってみて、初めて分かることがあった。

べるものを用する。

賃を払う。

子どもを学へかせる。

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病を医者へ連れてく。

族は、願いだけではきられない。

源蔵も、隆次も、それを続けたのだ。

「悪かったな」

源蔵が突然言った。

慎太郎は顔をげた。

「何が」

「帰ってきたにへ入れなかったことだ」

慎太郎の胸が詰まった。

源蔵は目を閉じた。

「入れたら、隆次の居所がなくなるとった」

「……」

「おならでもきていけるとった」

「勝だな」

「勝だ」

源蔵はまたさく笑った。

慎太郎は父のを握った。

そのは、幼い頃に商売を教えてくれたよりずっと軽かった。

源蔵はそれからもなくくなった。

葬儀の、にはくのが集まった。

慎太郎は男としてにった。

隆次も、その横にいた。

2が肩を並べるのは久しぶりだった。

葬儀が終わり、がなくなった夕方。

慎太郎と隆次は先に並んで座った。

をくもほとんどいなかった。

しばらくして隆次がをいた。

「兄さん」

「うん」

「俺、ずっと怖かった」

慎太郎は弟を見た。

「何が」

「兄さんが帰ってくるのが」

慎太郎は目を細めた。

隆次は膝のでを組んだ。

「帰ってきてほしかったんだ。本当に」

声がし震えていた。

「でも、帰ってきたら、俺がやってきたこと全部なくなる気がしてた」

慎太郎は黙って聞いた。

「を守ったことも、親父をたことも、義姉さんと正を助けたことも、全部『兄さんがいなかったからやっただけ』になる気がしてた」

「そんなことはない」

「でも、そうってた」

隆次はを向いたまま続けた。

「だから兄さんが駅から帰った、嬉しいのに怖かった」

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