みかん小説
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"4時20分で止まった遺品" 第18話

浩司は、裕が抱える茶封筒を見つめた。

「父さんはね、このを見ていたんだよ」

は、言も返すことができなかった。 美咲もまた、卓のの写真てを見つめたまま、顔面を蒼にしてち尽くしていた。

その恵が子から静かにがった。 恵は卓の製額縁をに取ると、美咲のへと歩み寄った。

「叔母様」

美咲が恐る恐る顔をげた。

「これ……返しに来てくださって、ありがとうございました」

恵は額縁を自分の胸に優しく抱きしめた。

「写真は、最初から私が持っていました」

あの、荒れ果てた倉庫の恵が言った言葉が、静かに返された。

「……額縁だけが、あのにあったんです」

美咲のが、力なくダラリとろされた。

は介護誌の封筒を胸に抱えたまま、よろめく取りで玄関へと向かった。 ドアノブにをかけ、ける寸で、裕度だけ振り返った。

「浩司……」

浩司は兄を見つめ返した。

「親父は……なんであの告訴状を、警察にさなかったとう?」

浩司はしばらくの、沈黙を守っていたが、やがてく答えた。

「……おばあちゃんがくなっただったからだよ」

の肩が、ビクッと震えた。

「父さんは、内を失うわけにはいかなかったんだよ」

が、胸元へとく垂れがった。 浩司はそんな兄の背を見つめながら、最言を付け加えた。

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「でも兄さんは……その度も父さんにそのことを聞かなかったじゃないか」

カチャリ、とドアが静かに閉ざされた。 その、武田裕と美咲が浩司たちのに姿を現すことは度となかった。

、野弁護士の元に、裕側から遺留分減殺請求訴訟の全面な取りが届いた。 父の遺した豪邸は予定通り競売にかけられ、見らぬに渡った。浩司が兄のそのの消息を尋ねることは、決してなかった。

最終章 したと受け継がれる誇り

季節がめぐり、父の周忌をに控えた、澄み切ったの朝が訪れた。

浩司は、町れにある古い計修理を訪れていた。 髪の主がルーペを目にはめ、ピンセットを使って父の腕計の裏蓋をけ、精密な内部の構をじっくりと覗き込んでいた。

「……これは、見事な細ですね。誰かがを加えています」

「父です」浩司が答えた。

の歯とゼンマイは、油を差して調すれば今でも完璧にきますよ。ですが、この針と分針……に特殊な留めで固定されていますね。かなり昔に固定されたもののようです」

主はピンセットを置き、鏡をして浩司を見げた。

「また、くように戻しますか?」

浩司は、作業台のに置かれたさな計をおしそうに見つめた。

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分。 父が、息子のために止めておいてくれた

「はい」浩司はく頷いた。「かしてください」

、浩司が計を受け取りにを訪れると、綺麗に磨かれたガラスの奥で、細い秒針がチク、タク、チク、タクと力いリズムを刻んでいた。 ひび割れていた革ベルトは質な黒い牛革に交換され、細い傷だらけだった防のガラスも、品のように澄み渡っていた。

浩司は計を受け取り、自分の首へと巻き、尾錠を締めた。 のドアをけてると、抜けるようなの青空から柔らかな差しがり注ぎ、計のガラスのでキラリと反射した。 針は分を過ぎ、未来へと向かって秒ずつ、確実にんでいた。

父が止めていたが、再び流れ始めたのだ。

浩司は、あの郊の倉庫を売却しなかった。 漏りしていたスレート根をすべて剥がして頑丈なガルバリウム鋼板に葺き替え、が染みていたにはい防コンクリートを打ち直した。 腐った棚はすべて撤したが、父が使っていた巨な樫のの作業台と古い具類は、すべて美しく磨きげて元の位置に残した。側の壁の裏にある隠し部と空の庫も、父のきた証としてそのまま残された。

浩司は、遺産を使って派な設備を買い揃えるようなことはしなかった。

数ヶ、最のNC械とプログラミングの研修関に通い、のブランクを埋めるために猛勉ねて資格を取り直した。

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