みかん小説
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"4時20分で止まった遺品" 第15話

「兄さん」浩司は声をかけた。「父さんがどうして、兄さんに目に見える財産を全部くれてやったのか……私にも、ようやく分かったよ」

がゆっくりと顔を向けた。

「兄さんが、こっちの暗がりを見ないようにするためだったんだよ」

浩司は倉庫のた。背からは何の返事も聞こえなかった。 裕は最まで、父がなぜ自分たちに内緒でその所を守り抜いたのか、その理由を尋ねることはなかった。彼がりたがっていたのは、ただそこに何億円の価値があったのか、その数字だけだった。

の午内の法律事務所の会議に、張り詰めた空気のの男女が着席していた。

座には、松蔵の遺言執者である野弁護士。 片側には、武田裕と美咲、そして彼らが額の着を払って雇い入れた若弁護士。 ドアにい末席には、事の成りきを嗅ぎつけて同席した叔母の文子が、級ブランドのハンドバッグを膝のに乗せて座っていた。 向かい側には、浩司と苗が静かに並んで座っていた。

テーブルの央には、公正証遺言の謄本、貴属鑑定評価、そして父が遺した分の購入台帳の写しが然と置かれていた。

側の若弁護士が、勝ち誇ったように類を指先で叩きながらを切った。

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「倉庫の隠し庫より発見されたインゴットは、紛れもなく被相続・武田松蔵氏の遺産であります。その総評価額は百億円を超えており、当方の依頼である男・武田裕氏の法定遺留分が著しく侵害されていることはです。々には、最でも分の、すなわち約億円相当の遺留分侵害額請求権がします」

美咲は腕を組み、背もたれに寄りかかりながら浩司を睨みつけた。その角は、父の遺言が読みげられたあのと同じように、醜くつりがっていた。

弁護士は静かに鏡をし、クロスで丁寧にレンズを拭いてから、再びかけ直した。

「請求すること自体は、法な権利として自由です」

「では、支払いに応じるということですね?」若弁護士がを乗りした。

「請求する権利があることと、実際に銭を受け取れるかどうかは、まったく別の問題です」

弁護士は、机の引きしから通の茶く変した古い封筒を取りした。 表面には、付とともに、松蔵の几帳面な万の文字が記されていた。

の顔が、わずかに引きつった。

「……何の類だ、それは」

「武田裕さん、あなたがに犯した為の精算記録です」

弁護士が封筒から取りした最初の枚は、古びた借用の原本だった。

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『借用額:百万円 借主:武田裕

末尾には裕の自の署名と、鮮な赤い拇印が押されていた。 美咲の組んでいた腕が、スルスルと解けていった。

「あ、あなた……これ、何なの?」

は青ざめたまま、言も答えることができなかった。 野弁護士は、束目の類をテーブルのに広げた。松蔵が個の預を解約し、旋盤械を売却して、従業員の未払い与と原材料費の支払いに充てた際の領収の原本だった。

そして最てきたのは、枚の起訴類――『刑事告訴状』だった。

作成は借用と同じ。告訴欄には松蔵の実印が押され、被告訴欄には武田裕の名がはっきりと記されていた。

「松蔵氏は当、会社の約束形を無断で持ちし、裏カジノの負債に充当した裕氏に対し、告訴状を作成しました。しかし、母をくしたばかりの族をこれ以壊したくないというで、告訴状を提せず、自らの資産を削って債務を肩代わりしたのです。この百万円は、利息制限法の法定利息を含めれば、現点で千万円を超える未精算の債務となります」

文子が目を丸くしてを乗りした。

「裕! あんた、あのは取引先が倒産したから助けてくれって言ってたじゃないかい! 会社のを使い込んだのかい!?」

は机ののグラスにを伸ばしたが、指先が激しく震えてむことすらできなかった。

弁護士は淡々と告げた。

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