みかん小説
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"4時20分で止まった遺品" 第2話

「介護が終わったんなら、居候も終わりにしないとね。今ていってちょうだい」

柱に掛けられた古い壁計が、カチ、カチと規則正しく秒針をめる音だけが部を満たした。浩司は美咲の突きされたのひらを見つめ、それから自分の着の内ポケットにを入れた。指先が真鍮の鍵に触れた瞬、わずかに震えたが、それを取りして差し連の作が乱れることはなかった。

浩司は、美咲ののひらに直接鍵を渡すのではなく、そのすぐ隣にあった座卓の目のに、音をてないよう静かに置いた。

カタン。

美咲のの眉が、苛ちを隠さずにピクリとつりがった。 その部始終を襖のから眺めていた叔母の文子が、これ見よがしに舌打ちを鳴らした。

この、父が危篤に陥った際に見いに訪れたのはたったの回。それも回とも、玄関先でコートすら脱がずに「変ねえ」と言い残して分で帰っていった物だった。文子は茶碗の縁を指でなぞりながら、笑を浮かべて言った。

「倉庫だけでももらえたんだから、それで分でしょうに」

苗の膝ので、ねられた両がぎゅっとく握りしめられた。彼女は顔をげ、震える声を必に抑えながら言った。

「居候していたんじゃありません。お義父様のお世話をしていたんです。

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朝も夜も、族全員で……」

「お世話ですって?」

美咲はその言葉をで転がすように、わざとらしく甲い声で繰り返した。

「お義父様のおべさせてもらって、しのげるに寝かせてもらってたんだから、介護費用なんてのはもう受け取ったようなものじゃないの。これ以何を欲張るつもり?」

浩司は何も言わなかった。反論もせず、ただ静かに顔をげ、遺のガラスに反射する蛍灯のをじっと見つめていた。そのの眩しさのせいで、父がどのような目で自分たちを見つめているのかは、最まで確認することができなかった。

弁護士ががり、玄関へ向かう途、浩司の横を通り過ぎざまに枚のを差しした。遺言の公正証謄本の写しだった。 浩司はそれを受け取り、無言で会釈をすると、がって裏から庭へとた。

の空気は刺すようにたかった。 浩司は庭の古いブロック塀に背を預け、たいがコートの袖から入り込むのをそのままにしながら、つ折りにされた用を広げた。

『郊にある倉庫の建物、ならびにその敷。それに付随するすべての空と、蔵置物、倉庫内の物品のすべて』

タイプライターで然と打たれた公証の印字のに、まったく同じ文言がもう度、きで記されていた。

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跡が違っていた。 それは、晩の父が震えるに力を込め、を削るようにして直接き残した文字だった。

『蔵置内の物品のすべては、武田浩司に与える』

の先がい込み、裏面にまで凸凹とした圧の跡がくっきりと残っていた。浩司はその力い文字を度、度と見つめ返した。 識が混濁し始めていた最の数ヶ、同じ言葉をうわ言のように何度も繰り返していた父の姿がされた。ただそのの執着が、ここにも押しとして現れただけなのだろう、と浩司はった。

を折り畳もうとした、その線がさくされた最に留まった。

『ただし、故に使用していた古い腕点は、武田浩司に別途相続させる』

浩司はズボンのポケットから、先ほど拾いげた腕計を取りした。 針の属の針は、分を指したまま完全に止まっていた。 計を裏返すと、傷だらけのステンレス製の裏蓋に、浅く、さな文字が刻まれていた。

『松原精密』

まで父が経営していた、さな町の名だった。 属部品を削りし、ミクロン単位の精度で械の歯や錠を自らので組みてていた、職としての父の誇りが詰まった名だった。浩司は親指の腹で、その刻まれた文字を度だけ、なぞるようにして触れた。

カチャリ、と玄関のアルミドアがく乾いた音が響いた。

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